夕方の放課後、空太とゆりは学校の図書室で宿題を片付けていた。空太は数学の問題集に頭を抱えていたが、ゆりはその隣で紅茶を楽しみながら、難しい本を読んでいた。
「ねえ、ゆり。先生が『コンピテンシー』って言葉を使ってたんだけど、何のことだか全然分からないんだ。なんかすごく大事なことみたいだけど…」空太が困った顔で尋ねた。
ゆりは一瞬本から顔を上げ、優しく微笑んだ。「コンピテンシーね。それは、最近よく聞くけど、確かに少し難しい言葉だわ。でも心配しないで、説明してあげる。ちょっと物語のように考えてみようか。」
コンピテンシーとは?
ゆりは空太に向き直り、説明を始めた。「コンピテンシーというのは、簡単に言うと、ある特定の仕事や活動をうまくこなすために必要な知識やスキル、そして行動のことを指すの。例えば、空太がサッカーの試合でゴールを決めるために必要なことって何だと思う?」
「えっと…サッカーのルールを知ってることとか、ボールを蹴る技術とか、試合中にチームメイトと協力することかな?」空太は少し考えて答えた。
「その通り!それがコンピテンシーの一例だわ。サッカーで成功するためには、知識や技術だけじゃなく、チームワークや判断力も必要だよね。それが全部合わせてコンピテンシーになるの。」
コンピテンシーの歴史的背景
空太は興味津々でゆりの話を聞いていたが、少し疑問が浮かんだ。「でも、そんなコンピテンシーって、いつから使われるようになったの?」
「いい質問ね。コンピテンシーという概念が広く知られるようになったのは、20世紀の後半からなの。特にアメリカの心理学者であるデイヴィッド・マクレランドが1973年に発表した論文がきっかけで、『コンピテンシー』という言葉が注目されるようになったのよ。」
ゆりは少し本棚を見渡して、心理学の本を取り出しながら続けた。「それまで、人々が仕事で成功するために必要なものを測るために、主にIQテストや学歴が使われていたの。でも、マクレランドはそれだけでは不十分だと考えて、実際に成功している人たちが共通して持っている特性やスキルに注目したの。それがコンピテンシーの始まりと言われているわ。」
コンピテンシーの種類と仕組み
「でもさ、コンピテンシーってどんな種類があるの?すごくたくさんありそうだけど…」空太が質問を重ねた。
ゆりは頷きながら、説明を続けた。「コンピテンシーには、技術的なスキルや知識を含む『ハードスキル』と、人間関係や感情の管理を含む『ソフトスキル』の二つがあるの。例えば、空太がプログラミングを学んでいるとしたら、その知識や技術はハードスキルになるわね。でも、チームでプロジェクトを進めるためにコミュニケーションをうまく取ることや、ストレスを上手に管理することはソフトスキルに当たるの。」
「なるほどね…でも、どうやってそれを測るの?」空太が不安そうに聞いた。
「コンピテンシーを測るためには、行動観察や業績評価、さらには自己評価や同僚からのフィードバックが使われることが多いわ。例えば、ある人がどれだけチームで働けるかを評価するためには、その人が実際にチームでどのように行動しているかを観察するんだ。これを『行動ベースの評価』というのよ。」
コンピテンシーと文化
「でも、コンピテンシーって文化によっても違うの?」空太が新しい疑問を口にした。
「うん、その通りよ。文化によって求められるコンピテンシーは大きく異なるの。例えば、日本ではチームワークや協調性が非常に重要視されるけど、アメリカでは自己主張やリーダーシップがより重視されることが多いわ。だから、ある国で重要とされるコンピテンシーが、別の国ではそうでもない場合もあるの。」
未来のコンピテンシー
「最後に、未来にはどんなコンピテンシーが必要になると思う?」ゆりは空太に問いかけた。
空太は少し考えて答えた。「たぶん、技術がもっと進化して、今よりも複雑な問題を解決するためのスキルが必要になるんじゃないかな?例えば、AIとかプログラミングとか…」
「その通りね、空太。技術の進歩によって、新しいコンピテンシーが必要になるのは間違いないわ。でも、それだけじゃなくて、人間らしい創造力や共感力もますます重要になってくると思うの。技術と人間らしさを両立させることが、未来の成功に欠かせないコンピテンシーになるんじゃないかしら。」
エピローグ
夕焼けが窓から差し込む中、空太はゆりの話に聞き入っていた。「ありがとう、ゆり。コンピテンシーって、ただの難しい言葉じゃなくて、僕たちがこれから成長していくためにすごく大切なものなんだね。」
「そうよ、空太。これからも色々なことに挑戦して、自分のコンピテンシーを高めていこうね。」ゆりは優しく微笑み、また紅茶を一口飲んだ。
そして、二人は学校を後にし、新たなコンピテンシーを探求する冒険へと向かった。


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